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ガンスリンガーストラトス二次創作 ~綾ノ迷イ路(あやのまよいじ)~第九話

by
カリブ・カイ
カリブ・カイ
いつもは、半透明で輪郭が朧気に見えていた彼女が、今はしっかりと実体的な質量を持ってそこにいる。
天井を見ると、屋根に空いた穴から半透明な天井と、こうなる前はこんな風に綺麗に整列していたのであろう屋根瓦達。そしてを透かして、その向こうに夜空という見慣れぬ景色が続いている。
分からない事ばかりで呆然としていると、彼女はこちらに気が付き、慈愛さえ感じさせる穏やかな笑みを浮かべて一礼した。
「私はクシー。この時代の100年後から来たアンドロイドです。」
日常生活を送っている限りは、なかなか聞く事のない『100年後』や『アンドロイド』という言葉を除けば、それはごくありふれた自己紹介だった。
こちらの困惑を知ってか知らずか、先程よりにこにことした表情のクシーと名乗ったアンドロイドの女の子。
​「僕の名前はヒロ​​​​​​。」
これが本名ではなかったが。素性の分からぬ相手にフルネームを名乗るのは憚られた。
「ヒロさん、ですか。
良い名前ですね。」
そう言って再び優しく微笑む彼女。
得体の知れない存在のはずなのだが、何故だか警戒心がまるで湧かない。
「えっ…と、君はどうしてこんな所へ?」
こうしていても話が進みそうにないので、取り敢えず先程の“自己紹介”に対する質問をしてみる事にした。
「クシー、私の事はそうお呼び下さい。
私がここに来た理由は、ヒロさんを…いえ、この時代に観測された適格者反応の持ち主を探しての事です。」
「…適格者?」
聞き覚えのない単語に、思わず聞き返す。
「適格者とは、時空越境作戦にて他時代にタイムリープ可能な適性を持つ者の呼称で、時空越境作戦とは、2つのこの日本の未来の姿、フロンティアSと極東帝都十都管理区の分岐点である2015年にタイムリープし、もう片方の勢力への歴史の起源点を取り除く事で未来を消滅させる作戦で、私はフロンティアS側のクシーという事になります。」
「へえ、大変だね。」
こちらが質問に口を挟んだからなのか、返答の一言目の『時空越境作戦』に関する簡単な説明まで添えてくれたが、新しく「2つの日本の未来の姿フロンティアS・十七管理区」や、もう一つの世界の消滅を避けると言ったが、何故そのような事をしようとしているかの理由といった疑問が生まれ、このままでは全て聞き終わるには二、三時間は話通してもらわねばならなそうである。
そして、聞いた話を十全に記憶し、理解・納得する自信もない。
しかし、折り入っての願いがあるのだろう事は伝わってきた。
たとえ自分はガーディアンなんてなれないとしても、目の前の女の子一人に手を差し伸べる事も出来ないとあっては、この道場の名折れだ。だから…
「それで、僕は何か力になれるのかな?」
そうとだけ尋ねた。
「はい、是非ヒロさんのお力を借りたい事があるのです。
ですが、ご無理でしたら断って下さっても構いません。」
義理も義務もない者に助力を求めるのを申し訳なく思うのか、彼女は深く頭を下げ、こちらの意思を尊重する姿勢を示す。
「いいよ、話を聞かせてよ。」
それでも、腹は決まっているのだ。
すると、彼女は「ヒロさんの心広さに感謝します。」と前置きをし、来訪の理由を語り始めた。
「先程、2つの世界の片方の消滅という話がありましたが、両方の世界どもども消滅させてしまおうという考えを持つ者がタイムリープを行い、この時代に根城を作り活動を行っているのです。
その者の名は悪土王。
この悪土王を見つけ出し、2115年に送り返すお手伝いを、ヒロさんにお願いしたいのです。」
更新日時:2019/06/11 15:14
(作成日時:2019/06/11 15:09)
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