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ガンスリンガーストラトス二次創作 ~綾ノ迷イ路(あやのまよいじ)~第五話

by
カリブ・カイ
カリブ・カイ
鮮やかな投げ技の手並みに、銃弾は逸れていたのかとも思った。
しかし、振り返った姉は、夥しい血を流していた。
恐ろしく酷い量流れた血液が、姉の白いシャツを文字通り赤く染め、足元の血だまりは見る見る間に広がってゆく。
「あ…綾姉。」
「ヒロ坊。怪我は無い?」
怪我の状態が気掛かりを通り越し、なんて声を掛ければ良いか分からない自分に、姉は本当に何もないように、逆にこちらに対する心遣いの言葉まで返す。
しかし、その声音はところどころ掠れている。
「『怪我は無い?』…って。
それは、こっちのセリフだよ。
何で、僕なんか庇って……」
「良い“後の先”だったよ。」
こちらの問いには答えず、姉はそう話し出した。そして、こう続ける。
「そして、胆力も。
ヒロ坊は、自分が避けてしまっては、外れた弾が後ろにいる子に逸れてしまうのが心配で、敢えて動かなかった。…違う?」
そして、一息会話を切ってクスリと笑う。
「ヒロ坊は、何で庇ったの?」
「それは…」
それは、答えに迷う質問だった。
そうした動機は漠然としている。

-弱気を助け、強気を挫くのが道場の教えだから。
-人が、それも年端もいかない子供が撃たれるのは可哀相だと思ったから。
-人々を守るガーディアンに憧れているから。

口にするのもこそばゆい。
些細な自分にとっての当然を、人に分かってもらえるように話すのは大変だ。
「ほら、『何でか』なんて答えられないでしょ?」
血の気の失せた顔色で、それでも穏やかな表情のまま言う。
「ヒロ坊は、いつか凄い剣の使い手になる。
きっと私なんか手の届かないくらいの剣豪に、ね。」
「…綾姉?」
話す姉の目の焦点が合っていない。
どこか遠くの誰かに話しかけているかのように、あるいは、そんなこんなどこかへ行ってしまいそうな雰囲気。
「いつか私に話してくれたようなガーディアン…なんかじゃなくて……、
ヒロ坊は……、ヒ…ロ………」
姉の体が傾く。
「綾姉!!」
それを受け止めると、恐ろしく軽く…そして、冷たい。
揺さぶってみても、呼び掛けてみても一切の反応がない。
「そんな……。
…綾姉……綾姉ーーーーーーっ!!」
間もなく救急車が到着し、病院に搬送される道中。
姉は命を引き取った。
更新日時:2019/06/10 12:09
(作成日時:2019/06/10 12:07)
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